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※上記の記事を以下に、Google Drive で「文字起こし」しました。
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好書好日 本と出会う
 朝宮運河のホラーワールド渉猟1「戦争とオカルティズム」 藤巻一保

ふじまき・かずほ
1952年北海道 生まれ。中央大学文学部卒。 編集 者を経て著述活動に入る。
東洋の 神秘思想 近代新宗教に関する著 作を数多く手がけている。

本の情報サイト「好書好日」か ら、注目を集めた記事の概要を紹 介します。旬の作家に迫るインタ ビューから、小説のトレンドを伝える時評まで、本との 出会いのきっかけとな る記事です。

「神憑り軍人」たちは何を信じたか 藤巻一保さん「戦争とオカルティズム」インタビュー(怪奇幻想ライター・朝宮運河)|好書好日 → 以下の記事の詳細版(?)です。

藤巻一保の著書(amazonより)

藤巻一保のおすすめランキング(59作品)

藤巻一保さんは、札幌北高21期の超人気作家です。
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「神憑り軍人」たちはなぜ信じたか

藤巻一保さんの「戦争とオカルティズム」(二見書房)は、 現人神信仰というイデオロギ に呪縛されたかつての日本 の実像を浮き彫りにする労 作です。 ユダヤ陰謀論、偽史、神霊のお告げを聞く古神道などとエリート軍人たちの 関わりを描き出しています。

オカルトに魅了された 旧日本軍の軍人たちを通して、日本を「聖戦」へと導いたイデオロギーに迫った異色の戦争裏面史ですね。

 日本は「神の国」であるという信仰に支えられた状況についてずっと気になっていました。陰陽道や密教などの研 究をし続けてきたのも、かつ ての日本を覆っていた狂気の 背景に迫りたいという動機があったからなんです。

 いくら合理的な分析を積み上げても、「神軍人」を 多数生み出した異常な時代を理解することはできない。現人神信仰という官制神話のもと、数多くの宗教家やオカルティストが出現しました。それがエリート軍人たちの思想に大きな影響を与え、ひいては軍の方針をも左右していくその怖さを感じ取ってもらえたらと思います。

―第1章ではユダヤ陰謀 論に取り憑かれた軍人たちを 取りあげています

 当時は資源や土地を求め 中国大陸に進出する以外、社会経済の行き詰まりを解消する方法がないという危機感、切迫感があった。大 陸進出に都合のいい大義名分として利用されたのが、ユダ ヤの魔手から東洋を守るん だという言説でした。それ は陰謀論に過ぎないと退けた軍人も多かったんですが、い つの時代も危機をあおる側は声が大きいですから(笑)

「竹内文書」なども信 じられていたようですね。

 キリストが日本で死んだとか、世界文明は日本から始ま ったという奇説がなぜ当時もてはやされたのか。そのひとつの理由は、欧米への強烈な劣等感です。科学技術ではとても欧米に太刀打ちできない。じゃあ何で勝てるのかといえば、古代から現在ま連綿と天皇家が続いているという、万世一系の神話なわけですよ。天皇が神(天照大神) の直系子孫で、日本だけが特 別な神の国なんだという教育を、国家が国民に植え付け続 けてきた。

 こうした超古代史オカルト には海軍大将の山本英輔、陸軍大将で首相にもなった小磯国昭など多数の軍人が、それこそ骨がらみで魅了されています。 官制神話を若い頃からたたき込まれ、純粋培養された集団ですから、オカルティックな思想と親和性が高い。 国家が若者に偏った思想を植 え付けたらこうなるんだよ、という恐ろしい実例ですね。

 (怪奇幻想ライター・朝宮運河)